水処理技術の先駆け
2008-12-16 16:27
すべての膜を自社開発する強み

RO膜エレメント「ロメンブラ」
日本の膜メーカーの代表的な企業が、東レ株式会社である。
東レは今から40年前の1968年に日本で初めてRO膜の研究開発に取り組み、1980年代に半導体産業向け超純水製造装置用を中心に企業化した。21世紀に入ってからは大型プラントへの納入が続いている。「RO膜の世界市場の規模は2001年では約300億円だが、2010年には500億円近くまで伸びると推定している。RO膜における東レの世界的シェアを2010年には29%まで拡大する」と語るのはメンブレン事業第1部長の房岡良成氏だ。

MBR用PVDF浸漬膜
膜は水質や用途などによって、RO膜、NF膜、UF膜、MF膜、MBR用PVDF浸漬膜と使い分けるが、競合他社と比べ、東レの最大の強みはこれらすべての膜を自社開発していることであろう。
「他の膜メーカーでは、膜技術の購入や、企業買収などで技術を取り込んできたケースが多い。当社では会社のベースが合成繊維メーカーなので技術的なバックボーンがあるから、すべての膜を自社で開発している。膜素材の研究から取り組んでいるので、膜の特性を理解し、より良い使い方を提案できる」(房岡氏)。
例えば、複数の異なる種類の膜を組み合わせて水処理をするIMS(統合的膜システム)というシステムがある。それぞれ機能が違う数種類の膜を組み合わせて1つのプロセスを作ることで、水質が良くなり、運転管理も容易になり、コストも下がるというシステムだ。こういったプラントを作る際には数種類の膜が必要であり、設置・運転する際のノウハウも必要になってくる。このような時には、すべての膜を扱う東レが最大の強みを発揮する。
国内外で膜の納入実績はトップレベル

スレビアの下水再利用プラント(クウェート)
ここ最近における東レのRO膜の納入実績を見てみよう。膜を用いた下廃水再利用プラントとしては世界最大であるクウェート・スレビアの32万t/日をはじめ、アルジェリア・ハンマの海水淡水化プラント20万t/日など、世界各地の巨大プラントに納入しており、累積造水量では約1,400万t/日の水を世界中に供給している。これは生活用水として考えた場合、5,600万人分の水量にあたる。また、シンガポールの国家プロジェクト“NEWater”(下廃水再利用による再生水製造)では、2009年よりチャンギで22万8,000t/日の水を供給する予定だ。その他の膜の納入実績でもトップレベルにある。
このように製品精査の厳しい巨大プラントからオファーがあること自体、東レの膜技術への高い信頼性を伺わせる。
日本国内での実績では日本各地に水道用途を中心にMF膜を導入しており、中でも日本最大の膜ろ過施設である東京都水道局の砧浄水場と浄水所では、日量として計8万tの水量を供給している。東レのUF・MF膜での累積総プラント水量は30万t/日にのぼる。

アル・アインのMBRプラント(UAE)
またMBRでも中東向けを中心に大幅に実績を伸ばし、この分野でも累積総プラント水量は30万t/日を超えた。
課題としては、日本発で事業を世界展開していく中で、これまで現地の状況が見えにくいという問題があった。これに対しては世界を4つの地域に分割し、それぞれの地域で現地法人の拠点を設け、現地のスタッフを中心に事業を展開するグローバル・セールス体制づくりを進めている。
東レの戦略として、今後さらに大きな成長が見込まれる〈環境・水・エネルギー〉を重点領域の1つと捉えている。「自社開発の分離膜事業を大きな柱に据えて、水処理技術のグローバルな拡大を目指す。また、環境問題にも積極的に取り組み、環境に対する技術を開発・提供していくことで社会貢献を果たしていきたい」(房岡氏)。
2025年には120兆円市場にもなるといわれる世界の水ビジネス。東レは水処理技術の最先端企業として業界のイニシアティブをとり、世界をリードしていく勢いだ。
掲載記事
MF膜, NEWater, RO膜, シンガポール, 東レ
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