マーケティング・イノベーション 徳永豊 氏

2008-09-18 15:29

徳永豊 氏

徳永豊
明治大学名誉教授
1956年 明治大学商学部助手、マーケティング研究を開始
1966年 明治大学商学部教授
1992~1994年 明治大学商学部長
2000年 明治大学定年退職
2003年 愛知工業大学経営情報科学部客員教授、現在に至る。ベンチャービジネス論を担当

「イノベーション・クーリエ」開花

マーケティングとイノベーションは非常に緊密な関係で絡み合っている。一般に、イノベーションといえば、技術革新ともいわれているが、それは大きな誤解である。技術革新によって生まれた製品であっても、その新製品が消費者や産業ユーザーの手元に届かなければ、イノベーションの価値は生まれない。つまり、消費者や産業ユーザーに購買され使用されることによって初めて、その製品の持っている価値が生まれるのである。

イノベーションについての学術研究は別として、わが国においてイノベーションの必要性が国民に向けられて本格的に説かれたのは、2002年の小泉内閣時代に国内的、国際的諸問題のあらゆる側面に結びついている経済成長と国際市場への積極的進出が国家的関心事になったことを契機に発足した産学官の連携事業としてイノベーション(技術革新)の必要性が持ち上がり、政府が全国の理工学部を擁する大学を中心に呼びかけたのが始まりである。そして、技術革新に関する大学の成果といえば、それに応じて研究されたイノベーションの成果は、当該大学に特許権の形態で知的財産として眠っているのが大部分である。当時、イノベーションを技術革新と訳したことから文科系の大学はほとんど無関心であったことも事実である。

政府は、21世紀の日本の成長戦略の要としてイノベーションを強力に推進するための基本構想を改めてまとめ直し、このプランの実現に向けて「イノベーション25戦略会議」座長を務めた黒川清内閣特別顧問を中心にイノベーションを単なる技術革新だけでなく、本来の姿である新しいニーズを掘り起こし、生活様式を替え、社会制度を変革するものと概念を広義に捉え、長期戦略的には『技術革新、社会制度の刷新、人財の育成、国民の意識改革などの推進を図って、継続的にイノベーションを生み出す社会環境づくりを行う』事業を産学官連携のシステムで提供することとなった。

それが『イノベーション・クーリエ』事業として開花したのである。

人財育成も必要条件

確かに、イノベーションにとって技術的発見の重要性は、産業革命以降、長い間、認識されてきたところである。また技術的発見といってもさまざまな状況が考えられる。例えば、生産技術が起こるのは、業種によって全く異なる。 製造プロセスに工夫を加えた、JIT(ジャスト・インタイム方式)から、原材料からその原材料に取って代わる原材料の開発、発見もあれば、それは産業によってさまざまな形として捉えることも可能である。極端にいえば、小売業段階でのイノベーションといえば、郊外型ショッピングセンターの構築、例えば、アメリカのストア・フォーマットの模倣であるが、全国的に見るとファクトリー・アウトレットも小売業イノベーションの一つである。また、製造段階ではなく物流方法の新システムを構築したフェデラル・エクスプレス(Federal Express)の例をあげることができる。航空貨物サービスには長い歴史があるが、エール大学大学院生であったフレッド・スミスが、期末レポートを書いたとき、『短時間配送を必要としている商品や書類』の翌日渡し配送と「ハブ・アンド・スポーク・システム」とを組み合わせて航空貨物郵便の改善ができるのではないか、というアイデアを思いついた。卒業後直ちにニューベンチャーとして、フェデラル・エクスプレス社を創設した。

ハブにあたるのがテネシー州ナッシュビルの空港で、全米の飛行場間をスポークとしたシステムのもとに、現在では、ハブ空港としてシカゴやサンフランシスコ空港などを位置づけ、グローバルなハブ・アンド・スポーク・システムを構築している。わが国においては、クロネコヤマトが、それにあたる。物的流通サービスの典型的な例である。

これらイノベーションの創造的価値を高めるためには、企業のマーケティング、経営刷新、マネジメントの変革および新製品開発、新技術開発、新市場開拓、新組織改革、新資源の創造、人的資源の育成ならびに起業家精神を抱く人財を育てることもイノベーションを推進するための必要な条件である。

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