イノベーション・クーリエ事業のミッションと皆様の参加の重要性 柘植綾夫 氏
2008-09-17 15:16

柘植綾夫
イノベーション・クーリエ研究会幹事会代表(芝浦工業大学学長)
国づくりの第3の重大変革期
21世紀の今日、日本は明治維新、第二次大戦後の戦後復興に次ぐ第三の大きな国づくりの重大変革期を迎えている。特に、国内では確実に到来する少子高齢化と労働人口減少時代において、いかに持続可能な発展を可能にするかという「地域の視点も入れたナショナル・イノベーション能力強化」が必要である。
さらに、地球規模での問題である迫り来る地球環境とエネルギー問題、および水と食料問題などの問題解決に貢献する「グローバル・サスティナブル・イノベーション・エコシステム能力強化」も必要である。
“競争と協調”の両面からのイノベーション創出能力の強化が重要である。
「知の創造と社会経済的価値創造との結合機能」の構築を
イノベーションの創出には、長期的な視点からの地道な活動が不可欠であることは言うまでもないが、わが国の人口構成の急速な変化を考えると、この先10年間が勝負であるとの危機感が希薄ではないだろうか。
この10年を何も手立てをしないで過ごした場合、最早将来の日本にはグローバル・サスティナブル・イノベーション・エコシステム強化に貢献できるだけの国力を保ち続けることが困難になる。産学官と市民は、この危機感をもっと強く持ち、真の産学官民の連携を構築しイノベーション能力を強化する必要がある。
その実現のために、過去40兆円を超える科学技術振興投資に知の創造のストックを 10年以内に社会経済的な価値創造と世界貢献に具現化するとともに、長期的な視点からの “持続可能なイノベーション能力”の構築と強化を可能にする「科学技術的知の創造と社会経済的価値創造との結合機能」の構築が極めて重要である。これを「イノベーション・パイプラインネットワーク」と私は呼んでいる(図1)。

イノベーション・パイプラインネットワーク
その重要なポイントは3つに要約される。
- イノベーションの流れにおいて、知の創造と社会経済的価値創造の流れ(パイプライン網)が基礎研究から応用研究、製品開発、市場投入まで垂直に双方向につながり、かつ網の目のように学術分野・産業分野を横断的に双方向に結合する有機的な結合構造。
- イノベーションの流れの各段階(純粋基礎研究、目的基礎研究、応用・実用化研究、成果の製品化と普及)ごとに相互連携のもとで適切なマネージメントを行い、知の創造を社会経済価値創造に結実させ社会に還元するとともに、社会から知の創造にもニーズが常時還流する有機的な結合構造。
- 国の科学技術関連投資の3倍を上回る民間企業による研究開発投資メカニズムも、以上のイノベーション・パイプラインネットワークに一体的にとらえられている結合構造、と要約される。
参考文献:イノベーター日本、オーム社編、2006.11
社会と世界のイノベーション創出に皆様の参加を
科学技術駆動型のイノベーションプロセスが不確実で流動的であることから、イノベーション・パイプラインネットワークにおける知の創造と社会経済価値創造との結合確率をいかに高めることができるかが、21世紀の国づくりにとってきわめて重大な命題であるといえる。
この観点から、「イノベーション・クーリエ」事業は極めて重要なミッションを担うと考えている。この事業に参加される方、発刊物を購読される方は、全員が(図1)のイノベーション・パイプラインネットワークの構成員であり参加者でもある。
私は産業界における技術経営と総合科学技術会議での国の科学技術政策の両方の経験をもとに、イノベーション・クーリエ事業が社会と世界のイノベーション創出に貢献するようにミッションを果たしたいと思っている。皆様にも是非ともこの視点に立ち、イノベーション・クーリエ事業に積極的に参加されることを心より願う次第である。
柘植綾夫
イノベーション・クーリエ研究会幹事会代表(芝浦工業大学学長)
1943年 東京に生まれる
- 教育
- BA (Engineering) U. of Tokyo, 1967
- MA (Engineering) U. of Tokyo, 1969
- Dr. of Engineering U. of Tokyo, 1973
- Harvard Business School, AMP101, 1987
- 経歴
- 1969年4月 三菱重工業(株)入社
- 1997年4月 同社技術本部高砂研究所所長
- 2000年6月 同社取締役技術本部長
- 2002年4月 同社代表取締役・常務取締役技術本部長
- 2005年1月~2007年1月 内閣府総合科学技術会議 常勤議員
- 2007年1月~ 三菱重工業(株)特別顧問
- 2007年12月~ 芝浦工業大学学長
- 学術活動
- 文科省科学技術・学術審議会委員 2007年2月~現在
- 日本学術会議会員 2005年~現在
- 日本工学アカデミー会員 2004年~現在
- 日本伝熱学会会長2007年度
- 日本機械学会副会長 2004年
- 日本ガスタービン学会会長2002年
- 日本混相流学会会長 2002
- 日本原子力学会熱流動工学部門会長 1997年
- 国際原子力工学会議技術委員長 1997年
- 受賞歴
- 日本機械学会論文賞 1976年
- 国際溶接学会Houdermont Prize 2004年
- 主な研究分野
- エネルギー変換、熱工学、原子力発電、技術経営
- 最近の著書
- イノベーター日本、オーム社、2006年11月
- 学術とイノベーション、学術の動向、平成18年12月号
- イノベーション創出能力 と横断型基幹科学技術の役割、Journal of Oukan, Vol.1 No.1, Apr.2007
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