燃料電池の実用化に向けた革新的な脱白金触媒を開発
2008-09-16 15:09
日本最大規模の中核的な研究開発実施機関である独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)。日本の産業技術とエネルギー・環境技術の研究開発や、その普及を推進するという、非常に重要なミッションを担っている。 NEDOでは、イノベーションを 促進するための様々な取り組みも実施しており、それらの中から、 今後イノベーションとなり得る技術を紹介する。
NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)
http://www.nedo.go.jp/
炭素に触媒機能があることを発見

尾崎教授のカーボンアロイ触媒
ナノメートルレベルの微細な球状(ナノシェル)が確認できる
燃料電池は、従来の内燃機関等に比べて効率が高く、CO2の排出を大きく削減することが可能である。また、天然ガス、メタノール等の多様な燃料の使用が可能であり、石油代替の促進にも寄与する。さらに、静粛性に優れ、大気汚染の原因となる窒素酸化物や硫黄酸化物の排出量が少ないことから、環境保全上の効果も大きい。
燃料電池の中でも、固体高分子形燃料電池(PEFC)は、高出力密度、低温作動等の特徴を活かした家庭用、可搬型電源として、そして自動車用電源としての普及が期待されている。本格的普及のためには、現在の技術レベルよりも格段の性能の向上、長寿命化および低コスト化が求められている。これらの問題解決のために、燃料電池セルの劣化メカニズム解明等の基礎・基盤的な研究開発、高性能化・低コスト化のための部材開発等の要素技術開発、基礎的生産技術確立のための実用化技術開発、将来を見据えた革新的技術シーズを発掘する次世代技術開発、さらに燃料電池の実用化に向けた実証研究が実施されている。
しかし、PEFCは、現状では電極触媒として白金を使用しなければならないため、資源制約、コスト低減の観点から、固体高分子形燃料電池の実用化、将来的な普及に向けては、白金の低減化および白金に代わる触媒が求められており、世界的に研究開発が活発化している。
その中で、群馬大学の尾崎純一教授は、従来は白金を担持させる役割であった炭素に着目し、ナノメートルレベルの微細な球状(ナノシェル)の炭素原子の構造体に触媒作用があることを発見し、「カーボンアロイ触媒」と命名した。
NEDOでのプロジェクト化
NEDOでは、尾崎教授が発見したカーボンアロイ触媒に着目し、平成13年度から国際共同研究先導調査として、炭素に窒素・ホウ素を導入することによる高活性化に着手した。さらに、平成19年度からはカーボンアロイ触媒のメカニズム解明のために、東京大学尾嶋教授や北陸先端科学技術大学院大学の寺倉教授と連携し、 X線光電子分光による触媒の化学構造やシミュレーションによる理論的な検討を行っている。
この触媒は米国でも注目を集め、エネルギー省(DOE)が集中的な資金投下を行い、急ピッチでカーボン系白金代替触媒の開発を推進している。わが国のオリジナリティのあるカーボンアロイ触媒に関する優位性を国内外に示した。その上で国際的なイニシアチブを取るために、平成20年度から、NEDOの宮田シニアプログラムマネジャーをプロジェクトリーダーとし、東京工業大学、群馬大学、東京大学、北陸先端科学技術大学院大学、(株)帝人、日清紡績(株)を実施機関とするコンソーシアム型プロジェクトを実施し、カーボンアロイ触媒の実用化を目指した研究をスタートしている。このプロジェクトは今後、基礎から応用まで幅広い研究成果が大いに期待される。

カーボンアロイ触媒の発電性能評価結果
カーボンアロイ触媒を用いた燃料電池の電圧・電流曲線を示す。白金触媒を用いたものと比較するとまだ十分ではないがきわめて大きな可能性が示された。
掲載記事
NEDO, カーボンアロイ触媒, 尾崎純一, 燃料電池
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